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2006'01.19.Thu
プリチーヴィンセント@
ヴィンセント夢
プリチーヴィンセント@


 男は眉根に皺を寄せてキョロキョロとあたりを見回していた。赤いコートが、彼の印象を和らげている。は街中に佇む男に見覚えがあった。かつて共に旅をした仲間は彼女に気付くと子犬のような視線を向ける。(なんてかわいい)は足早に彼の元へ駆け寄り、どうしたのかと訊ねた。


「携帯を、買いに来た。マリンがうるさくてな。」
「一緒にいきますよ。まだ、時間ありますから。」
「用事があるのか」
「ティファとお買い物です。大丈夫。あと一時間はあります。」


 携帯の買い方がわからない、と男は呟いた。彼は無表情にものを云うので、場合によっては誤解を与えやすいが、子供のようなその理由には笑いを殺すことが出来なかった。笑う。彼は僅か、頬を赤らめた。


「機種とか、もう決めてますか、」
「いや」
「じゃあみんなと同じとこにしましょう。便利ですから。」
「わかった。」



 はヴィンセントに最新タイプを差し出したが、ボタンが小さすぎるとダメだしをくらった。クラウドが最近買い換えたものと同型だったのだが、彼のお気には召されなかったようだ。電話が出来れば事足りるのだと、彼は云ったが、メールの普及した今、電話よりそれが便利だと、彼女は彼を諭す。男はメールとはなんだ、とさすがに其れは聞かなかった。


「カメラ付しかないですね。」
「ならば構わない。」
「画面とボタンは大きいほうがいいんですよね、」
「ああ」
「それなら!ちゃんのお勧めはコレです。わたし、今これ使ってるんですけど、きっとヴィンセントさんにも使いやすいと思います。」


 彼女の差し出したセルフォンは、彼女の掌に納まる程度の、少し丸みを帯びたデザインのもので、ヴィンセントが持つには多少可愛らしすぎに思えた。が、彼女のカラーは淡いピンクであったからだろうか。ブラックの展示品は彼の手にもおかしくはない。ヴィンセントはあまり考えることも無く、邪魔にならないだろうそれを購入した。


 電話番号の下4桁を選べといわれ、彼は彼女の誕生日を指定した。は冗談だといって制止を試みたが、他にいい番号を考え出せず、それは失敗に終わった。は仕返しに、ときっと彼独りでは設定変更できないだろう、メールアドレスを「プリチーヴィンセント@」といれた。彼がこのアドレスに気付くのはどれほど経ってからだろうか。そのときを思うと、ささやかな笑いが込みあがってくる。


「ヴィンセントさんのお友達は、わたしのお友達と大体一緒なんで、勝手にいれちゃいますね。」
「頼む。」


 は自分の携帯に指を滑らせ、アドレスブックを添付したメールを「プリチーヴィンセント@」宛てに送信する。ヴィンセントは彼女の滑らかな指の動きに器用なものだと感心した。


「完了です。えっと、此処押してみてください。で、じゃあ試しにわたしに電話かけてみてください。これ、このボタン押すだけですよ。」
「わかった。」


ヴィンセントは購入したばかりの文明の利器に恐る恐る指を這わせた。壊してしまわないか不安なのだろうか。その仕草をかわいいと思ってしまったは、年上の男の人にそれは失礼だと背筋を正した。


です。』
『・・・わたしだ。』
『声がステレオで聞こえて変な感じです』


はにこりと、少し照れくさそうに笑った。ヴィンセントにはその笑みの意味がよく理解できなかったが、ただ愛らしいものを見たと思った。


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22 :20/ OLD
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