小説置き場。偏見と偏愛をくどくどかいております。
ごあいさつ
フリーエリア。Information等にお使いください。
不要な場合は▼インフォメーション~//▲インフォメーションを削除。
--'--.--.--
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2005'10.24.Mon
紅蓮の月
十二国記の景麒と陽子のおはなし。
お月見をする(かなり違う・・・
慶東国が金波宮の正寝に二つの人影が並んでいた。真夜中に、なにをするでもなく闇を見つめている。陽子は甘い酒に微かに頬を染め、後ろに佇む青年を振り仰いだ。景麒は主の空になった杯に蜜を注ぎながら、ごく親しいものだけにわかる笑みを見せた。
淡い色彩を放つ、月光のごとき金の鬣が夜風に攫われ、陽子の紅の糸に交じる。まるで今宵の月のようだ、と景麒は思った。普段は冷たい蒼白の光を浮かべるというのに、今夜に限って、燃えるように紅い。陰影のついた眩しいそれは、まるで紅蓮のようだった。冷たさに耐え切れなくなった皮膚が割れ、その肌に血色の蓮を咲かすように。

「まっかな月だ」

今夜はとても月が大きく見える。蓬莱とは違い、夜には漆黒の闇が訪れるため、街の光に空の輝きが負けてしまうこともない。清浄な空気に星々の光がはっきりと見えた。陽子はまた、景麒に酒を注がせる。彼女の顔が微かに赤く見えるのは、月光のせいだろうか。

「紅月ですね。めずらしい」
「わたしの国では、赤い月は人を狂わすというが、こちらはどうなんだろうか。」
「こちらにも似たような話がございます。」
「話してくれ」

景麒は一瞬、考えるように沈黙したが、すぐに呼吸を吐いた。

「昔、どこかの王が紅月に狂い、一夜にして国を荒廃させた・・・というものです。王は人ではありませんので、蓬莱のそれとは少々異なります。」

ほう、と陽子は相槌をつくと、真摯に月を見つめる。クレーターの影すらも紅く染まって見える。夜闇に赤い光、というのは、確かに妖艶な何かを持っているようだ。陽子の、月に魅入る横顔を見つめ、景麒はゴクリと喉を鳴らした。
美しい主。ただ一人のヒト。心の奥に、王者たる熱情と、そして冷血さを秘めている。

「実話なのか?」
「さぁ・・・存じあげません。御伽噺かと。」

陽子はいつの間にか隣にいた半身に振り向くと、彼がずっと自分を見つめていたことに気がついた。反射的に視線を外そうとした男の頬に繊手を伸ばし、それを阻止する。褐色の皮膚が彼の恐ろしく白い肌に境界線を造った。

「・・・いや、実話のようだ。」
「主上?」

景麒は不思議そうに彼女を呼ぶが、陽子は口元に淡く笑みを浮かべ、彼の鬣を引っ張った。景麒の唇に、なにか、とても柔らかいものが触れると、微かに酒の味がする。彼の瞳が驚きに見開かれると、陽子は実に楽しそうに手を放した。景麒は主上、と反論の声を上げたが、彼の扱いに慣れてきたこの王はただにやと笑った。

「紅月に王は狂うんだろう」
スポンサーサイト
09 :45/ OLD
Comment
コメントありがとうございます!
Comment Form
コメントありがとうございます!
Name
Subject
URL

 管理者にだけ表示
Track back
トラックバックありがとうございます!

Template by Girl's Dis Material by Fierd
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。