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2006'01.19.Thu
欠けていく月 満ちる海
プリチーの補完篇 R指定
欠けていく月 満ちる海




その晩、わたしは初めて男に抱かれた。冬のとても寒い日。素肌に触れる外気が冷たい。彼の舌先に翻弄されて、生々しい温度とその気化する感覚だけで意識が飛んでしまいそうになる。愛しいあの人の指が私に触れている。その事実がなにより私の神経を甘く麻痺させてゆく。月の光に見える、彼の黒い髪に手を伸ばした。サラサラ指の隙間からこぼれてゆく糸は、わたしの胸に流れる。白と黒のコントラストが美しいと思った。彼のなぞる手に我慢できず声を漏らす。小さな声だった。吐息に乗せた彼の名にどうしてか恍惚を覚えた。



「我慢することは無い」



彼は口付けをくれた。慣れたその仕草に、(あたりまえのことなのに)切なさを感じた。わたしは彼の初めてにはなれなかった。わたしは最後の女になれるだろうかと。



押し入れられた指に、腰を浮かす。彼の細く、長い指は、体の中でひどく質量を持った。重い。そう感じたのは錯覚なのだろうか。彼の指は私の中でたくみに動き、その一動作ごとにわたしは声を上げた。体液が分泌されてゆくのが、彼の動きが滑らかになることで判る。



「力を抜け
「や、そんなこ、と」



云われても無理だ、と続ける前に、全身から嘘のように力が抜けていった。彼はただ唇を吸っただけだった。腰が砕けるというのはこのことを云うのだろうか。一瞬の隙をねらって、彼はさらにもう一本指を埋め込んだ。わたしはそれをすんなりと受け入れ、シーツを体液で汚した。



何度も意識が飛び、そのたびに彼は優しいキスをくれた。泣いてしまいそうになる。彼が優しすぎて。今日は彼の前で大泣きしてしまったというのに、わたしは大概泣き虫なんだなと思った。むかしは泣く余裕なんてなかった。ヴィンセントさん。彼の名を呼ぶ。視線が絡んだ。



「その、さん、というのは、止めろ」
「ヴィンセント・・・」



初めて呼び捨てにした名前。何故だか、彼だけは初めからそう呼ぶことが出来なかった。壁を感じていたのかもしれない。しかし、もはや其れに怯えることもない。彼は長い時間をかけ、私の破瓜を成した。痛みは、うわさに聞くほどそうない。微かに血の香りが鼻腔を刺激する。指など比べ物にならないほど重く、熱い。シーツを握りしめるとそれは汗を吸って、皺を寄せた。呼吸が巧くいかない。銃でいつだったか撃たれたときは、もう少し余裕があったような気がした。



「人を・・・大切な人を、この腕にだけるとは思っていなかった」



ポツリと彼の口から言葉が漏れた。朦朧としていた目を凝らし、彼を見ると、そこには自嘲気味に笑む表情があった。そうだ。彼はこうして笑うのだ。胸が鳴った。わたしもそうだ・と笑いかけた。



ベッドがギシと音を立てる。古い、宿屋のそれは彼の動きに合わせて鈍い悲鳴をあげた。押し寄せる波に逆らわんと、彼の肩に爪を立てた。血の滲む匂いに、はっと我を取り戻したが、彼は汗でくっついた額の髪を横に流してくれた。痛くない、と穏やかに笑んだ。この心地をなんと云おうか。わたしはそれを表現する言葉を持ち合わせていなかった。擦れる粘膜が中心を貫く。奥が刺激されるたびにビクビクとひきつけを起こしていた。彼はわたしの指と彼のそれを絡ませ、ベッドに痛まぬよう押し付ける。どこまでが自分の手であったか。混濁する意識では捉えきれない。肌には大粒の汗が浮かんでいた。寒さは既に感じない。あるのは彼の熱だけだった。







は夜半過ぎに目を覚ました。世界は深々としている。彼女は彼の服を一枚着せられていた。部屋を見渡したが隣で寝息を立てているはずの彼の姿は見えない。どこにいってしまったのだろう。急に不安になって、そのままの姿で部屋を飛び出した。素足に冬の空気が突き刺さる。こんな寒い中、ヴィンセントは何処へ行ってしまったのか。ずっとあけてあると云われていた勝手口から宿を抜け出し、灯の消えた世界を探す。厩には足にしてきたチョコボが眠っていたので、そう遠くへはいっていないだろうと確信する。
風に乗って潮の香りがした。
そうだ、ここは海が近い。彼と初めて心を交わしたのは海だった。海は全て繋がっているのだ。きっと其処に彼はいる。確信めいた予感がした。



「ヴィ、ヴィンセント!!なにしてるの」



やはりヴィンセントは海にいた。夏になれば、そこは地元の子供たちで賑わう海浜になる。は砂浜を駆け、腰元まで冷たい海に浸かった彼にしがみ付いた。キュ、キュと砂が鳴る。ここの海はまだ美しいまま残っているのだ。



「起きたのか」
「いないんだもん!びっくりして、・・・にゅ、入水自殺・・・?」



誰でも、今の彼を見ればそう思うだろう。ヴィンセントは違う、と笑い、彼女の寝癖の付いた髪を撫でた。


「お前の、家族は海に眠っているのだろう。挨拶をしていた」
「覚えてたんだ・・・律儀なひと」
を頂く、と」



潮の引き始めた明け方の海を、二人はしばらく眺めていたが、どちらからともなく戻ろうかと呟いた。暁光が目に眩しい。薄らいだ月がぼんやりと浮かんでいた。


宿への帰り道、は思い出したように足を止めた。地面にうずくまり、足が痛いと訴える。胎内に傷をつけたまま、冷水に浸かったのだ。ヴィンセントは彼女を抱え上げた。肩に担ぐように乗せると、は苦情を投げつけ彼の背中を殴りつける。



「荷物みたいに運ばないでくださいー、お姫様抱っこは?」
「・・・またいつかな」



(補完)
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22 :29/ OLD
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