小説置き場。偏見と偏愛をくどくどかいております。
ごあいさつ
フリーエリア。Information等にお使いください。
不要な場合は▼インフォメーション~//▲インフォメーションを削除。
--'--.--.--
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2006'01.19.Thu
銀の誓約
銀の誓約(ツォン)

銀の誓約




の指から、銀色のものが零れ落ちた。彼女はあっと声をあげ、それを受け止めようと手を伸ばしたが、手のひらは虚しく宙を泳いだだけであった。銀色の指環は運悪いことに道路脇の排水溝へ吸い込まれていった。


「あ…落ちちゃった…」


彼女の呟きも又、街燈の淡く照らす夜の闇に紛れてしまう。あれはなかなか気に入っていたのに。はひとりごちた。昨日はひどい雨だった。あの銀色はもうどこか下流へ流されてしまっていることだろう。あれは、綺麗な思い出であった。母と呼んでいた人が最後に与えてくれたものだ。幼い頃、それは指に余った。首に掛けていたおかげで、それが血に濡れることは無かった。






、指環は?」
「なくしちゃった」


ツォンは少女の指を弄びながら問うた。彼は彼女のか細い指に嵌まるあの少しくすんだ銀を好いていたのだ。彼女も又、それを気に入っていたので彼は指環を贈り物に選ぶことは無かった。ツォンは手の甲に口付けた。この年頃にしては、やや肉付きの悪い手の平だと思った。


「私が贈ってもかまわないだろうか。」
「なに、それ、プロポーズみたい。」
「そう、なる。」


 は笑った。彼女の笑みは薄暗にぼんやりと浮かび上がる。窓より差し込むネオンライトに彼女の肢体がブルーに光っている。ツォンは女の答えを待たず、いつから用意していたのか、ベッド脇の引き出しに仕舞われていた指輪を少女の指に嵌めた。飾り気のないものだ。しかしそのために存在するような、彼女を彩る最良のものに思える。は左の薬指に突然あてがわれたものを視認し、目を大きく見開いた。彼が、こういった形式にこだわる男ではないと考えていたのだった。男は女を愛しこそすれ、それを象ることはない、と。


「わたしから魔力をうばうつもりですか?」


 ツォンは首をかしげた。その仕草が彼に似合わず可愛らしいものであったので、はクスリと笑った。


「女の、この指はね、魔力の源なんですよ。それを昔のひとは、こうして、銀で封印したの」
「他の男を惑わさないようにか?」
「そう。」


 (なにもしてあげられないけれど)は男の耳元で囁いた。ツォンはそれで十分だと思った。




(0511330 短い)

スポンサーサイト
22 :32/ OLD
Comment
コメントありがとうございます!
Comment Form
コメントありがとうございます!
Name
Subject
URL

 管理者にだけ表示
Track back
トラックバックありがとうございます!

Template by Girl's Dis Material by Fierd
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。