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2006'01.20.Fri
眠らない君の横顔(ヒノエ)
眠らない君の横顔(ヒノエ)




 ヒノエは炎の橙に揺らめきを見た。
 風が一筋吹いたような細やかな動きであったが、戦士の性か彼は閉じていた瞼を開けた。今宵は仲間の多くがそれぞれの用事にでており、囲炉裏のあるこの小さな荒ら家には彼と朔と龍の化身、そして神子が休んでいた。
 貞淑な尼僧  朔は早早に奥の部屋に戻って、今は微かに寝息が聞こえている。白龍もまた神子に寄添い深い眠りに落ちているようだった。




ヒノエがその長い睫毛を揺らすと、少女は小さく肩を動かした。華奢だなとヒノエはどこか嬉しそうに唇をあげる。




「姫君、どうしたの」




 彼は彼女に視線を向けず尋ねた。息を潜めた声は掠れ、危なげな色気がある。望美は囁くそれに、彼女も視線を合わせず答えた。
 こんな夜更けに目が合ってしまえば、きっと彼も彼女も止どまることは不可能だろうから。恋しいと慕う反面、お互いの立場を踏まえての選択である。
 神子とは神聖なものだ。その力は古来より処女に宿ると信じられてきた。




「眠れそうになくて、どうしようかなって」
「明日は出発だよ。眠らないと。姫君の身体が壊れてしまう」




 囲炉裏を挟んでの言葉は、火のはぜる音に時折阻まれ消え去ってしまう。望美は隣りで暖かそうに眠る白龍をちらと見て、しかし彼をみらぬようにして言った。
 瞳は語らぬを語る。熱を宿した魔力は逆らいがたいものだとヒノエは知っていたので、彼女の行動は神子としてもっともなことに思えた。




「大丈夫ですよ、結構丈夫なんです…あの、声、聞き取りにくいから、そっち行ってもいい、かな」
「おいで、俺の姫君」




 望美はゆっくりと腰を浮かせヒノエの隣りで膝を抱いた。白い膝小僧が朱色に染まっている。きっと彼の肌もこんな風に染まっているのだろうなと、少女は肩の触れない距離の男を思った。彼の赤い、陽に焼けた髪や瞳の光彩が炎に輝くのを思い浮かべる。想像のなかのそれはとても美しいものだった。




「愛してるよ望美。今は、まだ君を抱けないけど、戦が終わって、望美が俺の姫君になってくれたら、宵も明けもわからないくらい愛してあげる」




 ヒノエはそっと手を伸ばし、少女の手の甲を覆うように重ねた。火を一心に見つめる神子の表情は高潔な神気に満ちている。頼りない掌だ。しかし柔肌に剣士のものと分かるしこりが在った。彼女の繊手が剣を忘れるほどに、いつか大切に守ってゆければいい。ヒノエはいつの間にか肩に在った、彼女の重みに愛しさを覚えた。


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