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2006'01.20.Fri
沈む陽に祈りを(弁慶)
沈む陽に祈りを(弁慶)



 あの人が死ぬ夢をみた。
 わたしを守って、この腕の中で体温を失っていくとてもリアルな夢だった。あれはたしかに幻で在ったと、自分に言い聞かせる。あれは幻で在った。少なくとも、いま私が存在しているこの世界では彼の死はまだ見ぬ不確かな未来だった。望美の心は冴えなかった。



 
 明日はついに、彼女の「夢」のなかで彼が命を落とした日であったのだ。運命は確実に変化している。望美はそうわかってはいても、不安をぬぐいきれずにいた。
 雪の降る肌寒い気候も、かつての記憶と寸分変わらず重なって、花びらのように舞い散る雪を哀愁深い表情で見つめる。弁慶は、最近になって怯えるような仕草をみせる彼女に、一抹の不安と疑問を覚えていた。白龍と戯れる神子はますます神気を増し、仲間からの信頼も厚い。当初のような頼りなさはもう見受けられないというのに、彼は漠然とした異変を感じとっていた。




「望美さん、最近少し変ですね。なにか心配することでもあるんですか?」



 水がなくなったと、桶を持って汲みにいくという彼女の手からそれを奪い、荷物持ちを引き受けると、案外簡単に彼女と二人きりになることが出来た。大所帯の旅では、なかなかそのような時間は思うようにとれず、余裕然としていた彼なりにいろいろ苦労をしていたのだった。気まずそうに口を開きかけた少女を制し、先手をうつ。




「なんでもない、というのはぬきですよ」




 望美はばれていたかと苦笑いを向けた。弁慶はそっと彼女を見つめている。柔らかいまなざしは、いつも彼女の心を癒して来たが、今日ばかりはそうもいかないようである。弁慶がいままでもそうしてきたように、「八葉」から「恋人」へと精神的な距離を縮めようと、二者間にのみ通じる合図を送ったがそれは未遂に終わった。望美は初めて彼を避けた。




「私が、疎ましいですか?」



「いいえ!まさか…」




 望美の言葉には覇気が感じられない。気丈なほど明るい彼女だというのに、弁慶は胸を痛めた。




「最近、私ばかりを避けていますね。なにか理由があるんですか?私ではあなたの力になれませんか」




 脅迫めいた台詞に聞こえたかも知れない。弁慶は彼女が自分を深く思っていることを知りながら、それを口にした。
 二人は小さな川に辿り着き、少女は誤魔化すように水汲みをした。冬の水は驚くほど冷たい。赤くなってしまった神子の繊手を弁慶が包み込み、暖かい息をあてた。彼女の頬は桃色にうっすらと染まる。弁慶が目を合わすと、彼女は眉根を寄せた。




「明日、弁慶さんが、亡くなってしまう…夢をみたんです。それで、忘れられなくて、大丈夫だってわかってはいるんですけど、どうすればいいのか分からなくなってしまったんです」


「あなたの夢で、私はどんな様子でしたか?」


「わたしの、腕のなかで、笑ってくれてました」




 弁慶はふっと微笑みを浮かべた。少女の手を柔く握りしめ、瞳を細く狭める。最期があなたの胸なんて、私には幸せすぎですね、と笑う。触れた唇に答えを返し、沈む太陽に祈った。心配はいらない。




あれは幻で在ったのだ。





(遥か第二弾は弁慶。運命上書きシステムに万歳)

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