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2006'01.20.Fri
沈むそらが揺れた(敦盛)
沈むそらが揺れた(敦盛)
時折夢見ることがあった。彼女の白く、細い神聖な指が私のそれに絡み、彼女の祈りの言葉でこの穢れた身が浄化される。美しい神子はひとことだけ「さようなら」と私の名を呼ぶのだ。あつもり、と紡がれた言葉に耳を澄ませ、願望の中の私は穏やかに土へ帰る。その後のことを考えたことはない。神子は笑うだろうか泣くだろうか。それは私が思い描くべきものではなかった。














 心を色に譬えるならば、それは限りなく陰惨な彩りであろう。敦盛は夜雨の落ちる空を見上げてふと思った。一面の闇色には輝く星はなく、濃い灰色の雨雲が視界の及ぶ全てを覆っている。しとしと降る雨に感傷を刺激され、彼は笛を静かに奏でた。湿気のせいか音がくぐもって聞こえる。溜息を殺しきれず、音色の合間に重い呼気が漏れた。
 奥にある居間からは、仲間たちの笑い声が聞こえていた。ふらりと神子のもとを訪れた将臣の持ち寄った酒に、久方ぶりに羽を伸ばす八葉たちはひどく遠い存在に思えてならなかった。
 彼は、彼らのように明るい気持ちでわらうことがもう出来ない。敦盛は自らをそう定義付けていた。




「私を殺してもらえませんか」




 円い口当たりではあったのだが、将臣の酒は度が強い。盃一杯を飲み交わしただけで、それ以上を求めることなく退陣していた彼だが、酔ってしまったのだろうか。敦盛は白い頬を薄く色付かせた姫神子に願望を伝えた。深慮深い彼だ。いたづらに物を云わないことは望美も知っていたが、あまりに彼が淡々と告げるので、その言葉には真実味が湧かない。なんと答えればよいのだろうと思慮をめぐらすが、彼女の頼りない語彙ではそれもうかばずじまいだった。
 言葉にしようとすると、カタカナ語であったり、英語を起源とする表現ばかりが浮かんでくるのだ。
 敦盛は言葉に悩む少女に視線を向け、すぐにまた空を眺めた。




「私はあなたに滅されたい」




 望美の声は終に聞こえなかった。彼女は俯いて頭を左右に振り、彼の手に自分のそれを重ね合わせた。
 雨脚が強まり彼の着物に濃い染みを落としたが、それは雨粒のみではなかった。




 神子が私のために泣いている!衝撃が身体を走り抜ける。彼女だけは、世界が私を憎もうとも私が私を疎もうとも、私を想って泣いてくれる!



(敦盛ってどういうひとなのか ?)

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