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2006'01.21.Sat
クレオパトラ
クレオパトラ


エジプトの夜は寒い。

わたしは衣を羽織り、アレキサンドリアの夜景を眺めていた。深淵にも思える闇の中に、ぽつりぽつりと灯火が浮かんでいる。夕食の時間なのだろうか。夜空に白い煙が揺らいでいた。この愛しい眺めを守るのは私なのだと、衣を掴む掌に力が籠った。今夜この愛すべき都を、我が国を去らねばならない。夜風が肩を撫でる。昼の暑さの裏返しのようなそれは、決して優しいものではなかったが、怒りにたぎるこの心を冷ますには最も適していた。



わたしはプトレマイオス王朝の末裔としてこのナイルの恵み豊かなエジプトに生まれた。美しいアレキサンドリア。大王の成した都は幾代もの時を超え今なお誇り高く在り続ける。王宮からの眺めは絶景である。星々に照らされる砂丘や先王達の墓。そして広大なナイル。



さあ逃げなければ。弟王に国を追われ、シリアを目指す。亡命の女王。父王も、死の4年前には国を追われていたと思い出す。長いナイルの旅が、考えるに十分な時間を与え、わたしは国の行く末をうれいた。エジプトは私のものだ。祖国の夜は静かに褪せていった。



豊穣の大河。ナイルあってこそのエジプト。全てはこの赤土色の水より始まったのだ。このまま溶けてしまおうか。月の輝きを波間に溶すように。小舟から手を伸ばしそれに触れてみると、思っていたよりも冷たくはなかった。想像の通りに、凍て付く温度であったのならば、身を投げたわたしを氷付にしてくれるのではと淡い期待を抱いたというのに。けれど水は温かかった。太陽のぬくもりを未だ棄てきらずにいたのだ。私もこの身に宿る情熱を棄てるわけにはいかない。指先を濡らす雫をそっと拭って、ヴェールの前を閉じた。


復讐を奏でよう。集まった兵は数千。これは決して弟王のそれにひけをとらない。ペルシウムに兵を並べ、ナイルの対岸で弟王と目線を交わした。傀儡の王などこの国には必要ない。

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