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2006'02.08.Wed
HOT GIMMICK 1
HOT GIMMICK 1
凌おにいちゃんとはつみちゃん。
個人的補完篇・・・
 星が見える。都会の空にも星があったのだ、とハツミはぼんやりと思った。カーテンを閉め忘れたが、布団にもぐった後ではもはやその気も失せてしまう。後からやってくるだろうアカネが閉めるだろう、と彼女はそのまま瞼を閉じた。

 いつもよりとても早くに布団へ入ったというのに、その晩はなかなか寝付けなかった。凌の顔がちらつく。困ったように笑うのは昔からのくせだ。あのまま抱いてくれたらよかったのに、とハツミはきつく目を閉じた。

 リョーキのことは、確かに好きだった。彼はなんだかんだいっても彼女に優しかった。言葉では酷いことも幾度となく言われたが、ハツミをひっぱる手だとか、長い足のコンパスを調整して一緒に歩いてくれたりだとか、彼はハツミを恋人としてあつかい、大切にしてくれた。
 が、しかし結局は結ばれるはずのない恋だったのかもしれない。彼といるとき、ハツミの胸にはいつも不安が渦巻いていた。ご近所の噂、上下関係、家庭問題。それらから彼女を守る術をリョーキは持たなかった。


(眠れないよ・・・)


 カーテンはまだあけっぱなしのままだった。少しの間眠っていたのだろう、いつのまにかアカネが二段ベッドの上で寝息を立てている。ハツミはカーテンがどうしても気になってしまい、とうとう布団を抜け出した。部屋の中とはいえ空気はとても冷えていた。アカネを起こさないよう、とても静かに窓を目指した。床には、妹のものだろう、ジャケットが脱ぎっぱなしにされていて、裸の足に柔い。(またこんなとこに脱ぎ捨ててあかちんてば)呆れたように溜息をつくと、窓ガラスが白く曇った。

(あれ?)

 ハツミたちの部屋からは、丁度駐車場までの一本道が見えるようになっていた。他の部屋に比べて景色がわるいと常々思っていたのだが、そのときはそれに感謝した。
 静かに扉を少し開くと、冷たい風が流れ込んでくる。パジャマ一枚にその冬の凍気は痛みを伴って彼女を襲ったが、ハツミはなにも感じないかのように落下防止の格子に身体をのりだし「お兄ちゃん」とだけ声をだした。押し殺した声は静寂に響く。凌は驚いて振り返った。待ってて、とジェスチャーで伝えると、先ほどのジャケットを羽織り、そしていつものくせか、充電を終えた携帯電話をポケットにいれ、階段を駆け下りた。

 誰もいない社宅は気味が悪い。彼女の全速力で兄の元へ急いだ。
 肩で息をすると、呼気が宙で白く形を成す。一見して薄着のハツミに、凌は自分の着ていたダッフルコートを差し出した。「お兄ちゃんがさむいよ」とそれを拒むので、彼女を包み込むように肩に羽織らせる。ハツミは困ったような顔をしたが、凌は戸惑いの篭る声で「初」と呟いた。

「お兄ちゃん、こんな時間になにしてるの?」
「国立に戻ろうと思って」
「始発まだずっと先だよ。それに、朝になってからでもいいじゃん、どこか、いくつもりだった?」

 ハツミはなにか、言葉にならないものを感じ取っているようで、凌はその瞳には嘘は見透かされてしまうと思った。しかし、僧坊に入ろうとしていた、とはどうしても云うことができず、ハツミが何も言えなくなると知っていながら笑みを浮かべた。

 この表情をすると昔からはつみは喋るのをやめるのだった。凌が話したいことがあると、こうして静かに笑うくせがあるためかもしれない。

「本当だよ。ハツミも、一緒にくる?風間が車、貸してくれたから、電車じゃないんだ」

 ハツミは一瞬なにか考える素振りを見せたが、答えはすぐに返ってきた。

「うん・・・いく」




 二人を乗せた乗用車は、薄暗い国道を滑らかに進んでいく。車内はようやく温まったエンジンからの熱で程よい温度だ。フロントガラスが曇ることで、外気との差をわからしめる。

「さむくない?」
「お兄ちゃんこそ、コート、私大丈夫なのに」
「はつみ、凄い薄着だったから」

 点滅信号に注意を払いながら凌はアクセルを踏み込む。ミッションギアを器用に入れていく彼の指先がかっこいいな、といつのまに考えてしまったのか、ハツミは頬を赤くして俯いた。

 それを隠すように「お母さん心配するかな」と呟く。ハツミの声が小さかったので、怒られるとでも思っているのかと、凌は曖昧に「ううん」と返した。両親には既に、彼の気持ちがばれてしまった。絶対に大丈夫だ、とはいえない。

「大丈夫なんじゃないかな、手紙おいていったし、あとで電話すれば、大丈夫だよ」
「うん。あ、着替えてくればよかった。パジャマだー」
「うちに少し置いてたろ?それ着て、あとで買いに行こう」

 ハツミは頷くと、運転に集中する凌の横顔を気付かれぬように盗み見た。綺麗な顔立ちだ。云われてみれば、自分にも妹にも、弟にも似ていない。信じてきた「血」のつながりが無くなっていくようで、哀しさを覚えた。


「どうした?はつみ?」
「なんでもない」

 どうしてか、胸が高鳴る。つい最近まですぐそばにあったのに忘れていたのだ。恋をするとこうなる。

 ハツミは自分の中に育っていた兄への想いを発見した。それはパンドラの箱だ。気付いてはならなかったのではないかと考えてしまった自分に罪悪感を覚えた。(お兄ちゃんはずっと、こんな気持ちだったんだ)

 うずくような胸の締め付けに堪えかね、ハツミは凌のコートに顔を隠すように摺り寄せた。良く知った優しい匂いがする。

(わたし、お兄ちゃんがすきなんだ)

 頬があつい。胸が苦しい。けれど不安はなかった。
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2006/02/08(Wed) | | #[ edit ]
私もいざ
さっそくギミック読みましたわ。やっぱ文章お上手★
羨ましいですわ。おかげで自分のがかすんで見えてきたり。
自信がついたら贈呈します。気長に待っててv
オリジ読みたいがいろいろあって今日は断念。
必ず読むからね^^
2006/02/08(Wed) | URL | 未波鈴華 #pxxjxOTw[ edit ]
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