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2006'02.09.Thu
聖女は女神の夢を見る
聖女は女神の夢を見る
薔薇園と神の戯れの続きっぽい夢
キララクベースのイザーク夢。

色々考えたのですが、ラクスが評議会議長となるまでの時間を考えると、カレカノというより夫婦のほうがしっくりきたので、初夫婦設定です。
兎は静かに泣くの続々篇。
わたしはイザークが一番好きなようです。いや、書きやすいんですヨネ(笑)


 ラクスクライン邸のあの香しい花の芳香が思い出される。清純な白の薔薇園。秩序を乱す赤。美しい世界は彼に掴みようのない不安を与える。

 イザークジュールはラクスクラインの右となった。軍属である自分はまだ政治に関わるべきではないと考えていたが、議長直々に請い願われれば頷く他はない。

――しかるべき時が参りましたら文人としての貴方を求めさせていただきますわ――

 今はまだ銃が必要とされる。言外に述べられたラクスクラインの言葉はとても哀しいものに思えた。彼女と銃、それはあの薔薇園においてひどく不釣り合いだ。


「最近のあなた、とても疲れておられるわ」


 はピアノを奏でる指を止めると、鍵盤をのそきこむ夫に語りかけた。色素の薄い、全体的にぼんやりとした印象の、しかし意志のある強い瞳がイザークを捕らえる。


「そうでもない。議長よりはなにもしていないんだ」


 は思い浮かべる。ラクスクラインの美しい箱庭。一度、彼女に招かれて訪ねた。

 旧友ということになるのだろうか。かつて、一度目の戦争が起きる前、話をしたことがあった。当時彼女もラクスも議員を親にもつもの同士で、短い時間ではあったがお互いのこと・世界のこと・定められた婚約者のことを夢中になって話し合ったのだ。彼女の参謀にイザークが選ばれた際、奥様も・とラクスはを晩餐に招待した。


 その夜は、ラクスの要望で白夜とされていた。沈まない太陽。採光板を夜の時間になっても傾けないことは国家始まって以来のことで、人々はその光に彼女を感じた。ラクスクラインが戻られた!と母なる太陽に女神の祝福を求めたのだ。尤も、この宇宙の砂時計には太陽などありはしないのだけれども。

「こちらに戻って、ひとつだけ、我儘を赦してもらいましたの。今夜は地球の白夜ですから、プラントもそうして下さいませと」

 陽の満ちる彼女の庭は総てが輝いて見えた。英雄の隣に微笑む女神。真白な花園。あの頃はまだ、一輪の不調和は勿論、イザークの見たホワイトシンフォニィの白薔薇も存在せしめなかった。潔癖なまでの調和に、は息が苦しい思いだった。初めて話したあのラクスクラインはもうどこにもいないのだ。あのころの彼女はまだ人間だった。戦争が、平和の処女を神へとかえてしまったのだと。


「あなたとラクス様は違うわ。イザークまであの美しい白にならなくてもよろしいのよ」

 イザークは難しげに笑みを造った。困らせているのはわかっているが、はこれ以上彼が女神の境地に至ろうと苦悩する様を見ていたくなかったのだ。

 自分に出来ることは少ない。の得意とするものは様々な言語を操ることであったが、それは決して人の心を左右させる、ラクスのようなカリスマと同じではない。彼女に出来ることは、帰宅した彼に明るく笑みを見せ、僅かな救いを差し延べるただそれだけだ。


「お前は彼女に良く似ている。きっとあの方もそう言うのだろうな」
「そうでしょうね。…でも、わたしはラクスさまのように総ての方の幸せは祈れないの。…幻滅されましたか?」


 イザークは目を瞬いた。よもやがそのようなことを言うとは思わなかったのだ。彼女は個人の利益よりも全体のそれを重んじる、よく出来た女だったからだ。そう、まるでラクスクラインのように。


「いや…ただ、驚いたな。は万人に優しいと思っていた」
「わたし、浅ましいんです。ラクスさまのようになりたいと願っても、愛する方の幸せを一番に思ってしまう。わたし、無理なさっているイザークをもう見ていたくありません…」


 ピアノの鍵盤に滴が落ちた。白い象牙に不純が混じる。モノクロのフォルムに灰が混じるようだった。はピアノを痛めてしまうと、ハンケチですぐにそれを拭ってしまったが、彼女の頬はまだ濡れていた。
 
 イザークは俯いてしまった妻の髪にそっと触れた。柔らかい、ベルベットの手触りに溜め息が漏れる。ありのままに愛してくれる人はずっとここにいたのだ。聖女は女神ではない。しかし女は現実感をもって、彼の隣に存在している。


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