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2005'10.24.Mon
夜明けの行軍歌
ガンダムシードのイザーク夢。 出陣前。
夜明けの行軍歌

まだ陽は昇っていない。暁光も見えぬ空を眺めながら、身体は自然、グリーフィングルームへと向かっていた。よく眠れた、といえば嘘になるだろう。勝つ自信は十分ある。が、をいざというときに守りきる自信はそれほどなかったからだ。赤のパイロットスーツを寝起きの身体に着込むと、ぐっと精神がしまっていくのがわかった。この窮屈な衣装を身に纏うとき、殺し合いにいくということを、身体はよく知っているのだ。更衣室を出て扉の奥に進めば、目的地につく。自動ドアのむこうに、スクリーンに映し出された闇色の空を見つめる女がいた。

「イザーク、早起きなのね。おはよお」

は緊張を感じさせない、のんびりとした声で話し掛けてきた。この女は嘘吐きだ。苦しいとき、嫌なとき、逃げ出したいときほど、その感情に反した行動をとる。今も、きっと恐くて怖くてどうしようもないのだ。普段寝起きの悪いが俺より先にこの部屋で待機していたのが何よりの証拠だろう。

「まさかお前に先を越されるとはな。」
「起こしにいってやろおとおもってたのに。残念。」

は手袋だけ外した状態で、朝食代わりのゼリー食を胃に流し込んでいた。モビルスーツのコクピット内は、おもわぬGが掛かるため、出陣前は軽食と決まっているが、それも食べたくないときは、こうしてのように旨くもないゼリィ状の栄養を無理やり流し込む。戦場を駆けるだけのカロリーと、集中を保持するための糖分。いくら俺たちといえど、燃料は必要なのだ。は元々食が細いのだから、こんな日には食欲も消え去ってしまうだろう。

「パイロットスーツでか?恥ずかしいやつめ」

感傷的な想いを隠すように、彼女の冗談を冗談で茶化す。そうでもしなければ、この、生と死を身近に感じるこの空間に耐えられそうにもなかったのだ。だんだんと、周囲があわただしくなってくる。ドアの向こう側からかすかに聞こえる、乗員たちのせわしい足音と声。館内放送。スクリーンの端にぼんやりと映る、淡い、オレンジ。

「もうすぐ、陽が昇るな」

はゼリィの入った袋をぎゅっと握りつぶし、無理やりそれを飲み込んだ。

「戦争がはじまるのよ!せんそう、なんて、したくないけれど、死にたくもないし」

夜明けと共に攻撃を開始。奇襲作戦ではよくあるパターンだったが、規模が半端ではない。一師団の殲滅。要塞の破壊。めずらしく感情的に声を荒げた女を眺め、やはり此れはいつもと違う作戦だ、と改めておもう。はひとつ、大きな深呼吸をして、手袋を嵌めなおした。頑丈な布に包まれた、あの華奢な指先が、無骨なフルのトリガーを引いているのか、と不思議な違和感を覚える。
小さな声で口ずさまれたメロディには聞き覚えがあった。高い声は、聞き取れないほど小さく音符を並べている。そうだ、これは、がいつも戦場で歌っている旋律。

「そうだ、お前、コクピットで歌うの、やめろよ。何の歌だそれは」
「アメィジンググレース 知らないの?」
「なんだそれ」

少しだけ、声量が上がる。歌詞の乗った歌声が響いた。凡そ戦争にはふさわしくない、神の愛を信じる歌は、なりの鎮魂歌に思えてならない。

「聖歌。どっかの莫迦が死なないようにってね」

それはこちらのせりふだった。可愛くない女だ。
スクリーンが暁光に染まりだす。山の端は既に明るい。

「夜明けだ。いくか。」

震えを押し殺すの声が、スピーカーを通して聞こえてきた。
今日くらいは、あいつのために歌おう。どこかの莫迦が死なないように、神の愛の詩を。

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09 :56/ OLD
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