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2007'11.09.Fri
守護の腕
FE封印の剣より クレインとティト

ふたりとも二軍落ちしてますが、一番好きなカップリングです。
二周目は育てたいですネ。

クレインを守るのが役目なのに。
ティトの葛藤。
こういうまじめで融通のきかない子がかわいくて仕方ないです。

久々の小説・・・凹
身分違いにもほどがある。ティトは視線を下げた。小さな宴から少し離れた場所で、彼女は一人ため息をついた。さほど遠くないところに彼の人の姿が見える。灯火の光に明るく透ける金色の髪。自分が恥ずかしくなるくらい美しく、上品なエトルリアの貴公子は、祖国を同じくする将軍たちと葡萄酒をたしなんでいた。洗練されて、美しい人々の中にあっても彼の輝きは失われない。自分ではあの方に釣り合わない。ティトは隣りで話す妹に微笑みを返した。


「今日ね、ディークさんに言ったの。好きですって!そしたら、ディークさん、なんて言ったと思う?」
「あなたの顔をみたらだいたい想像がつくわ。」
「うん!わたし、ずっと妹としか思われてないって思ってたから、凄くうれしかった。」


良かったわね。ティトは優しく妹の頭を撫ぜる。明るく自由な妹は、自分にないものを全てもっているように感じた。シャニーならばどうするのだろう。もしシャニーが自分ならば、あの方の想いを受け入れるのだろうか。ティトは答えを求めたい衝動に駆られたが、たとえ妹が是と言っても自分が同じように行動することはできないだろうと言葉を飲み込んだ。ティトは真面目で融通の利かない自らの性質をよく理解していた。


「お姉ちゃんは?好きな人いないの?」
「そうね。いないわ。今は自分のことで精一杯だから。」
シャニーはふぅんと不満げに相槌をうった。
「お姉ちゃんに好きな人ができたら教えてよね!わたしも話したんだから。」
「そうね。わかったわ。」


恋人のもとへ駆け出していく妹の姿を見ていると、飛び付いた妹を抱き抱えた男と目があった。彼は少し照れくさそうに小さく頭を下げた。ディークはシャニーの属していた傭兵団の部隊長だったと聞いている。ずっと妹を守ってきてくれたのだと、ティトは深くお辞儀を返した。


あの方に抱き付き、慈しむようなまなざしで名前を呼ばれる。先ほどのシャニーとディークの幸せそうな姿が頭から離れなかった。自分も、あのように出来ればなんと幸せか。しかしあの方はエトルリア貴族で自分は貧しいイリアの傭兵でしかない。ティトはただ彼のそばで戦えるだけで満足だった。本来ならば出合うこともなかったのだ。戦争が終わればまた元どおりの生活が待っている。彼はエトルリアに、そして自分はまた傭兵として各地を巡るのだ。
好きになってはいけない。耳に優しい低い声や、意外に逞しい引き締まった腕の心地良さを思い出す。


守るはずの人に守られてしまった。隙をついた敵の矢が脇腹を掠めた、あの瞬間の絶望感。天空から転げ落ちる体を愛馬が必死に支えてくれたのを覚えている。朦朧とする意識と裏腹に、はっきりと鮮やかにうつる空の青は、イリアのそれより色味が濃いように思えた。自分の名を呼ばれたような気がして、重い瞼を押しあけると、背中が見えた。紺地の衣装に金髪が栄える。キリキリと音を立てる弓の弦がしなり、ティトを狙った敵兵をい抜く。立ち上がって、あの方を守らねば。しかし手足に力がこもらず、わずかに上がった腕が地面に落ちた。ティト、と呼ぶ低い声。温かく力強い腕のぬくもり。


まだあの時のお礼を言っていない。傷が治るまで前線から外されてしまったティトは彼に近付くこともできず、後方支援に務めていた。戦力から外されなかったのは、ひとえに彼女の強い要望あってのことだった。しかしクレインが彼女が戦場にたつことに難を示していることをティトは知っていた。やはり信用を失ってしまったのだろうと、彼女は言い様のない不安と後悔に沈んだ。
> とても宴を楽しむ気分にはなれない。しかし一人になるのも寂しさに負けてしまうのではないかと、ティトは馬屋に向った。幼い頃から共に育った愛馬になら、弱音をはける。甘えることに不器用な彼女はいつもこうして不安と悲しみを乗り越えてきたのだった。

「ねぇ、ありがとう。あなたが助けてくれなかったら、地面に真っ逆様だったわね…」

頭を撫でると愛馬は小さく嘶いた。

「わたし、自分が情けない…将軍を守るのがわたしの役目なのに、逆に足手まといだったわ。信用も失っちゃったみたい。…もう、ダメね、わたし…」

顔を寄せると、ペガサスは慰めるように大きな目を細めた。頬に短い馬毛が擦りよせられる。


どのくらいそうしていただろうか。ペガサスがピクリと身動ぎしたのに気付きティトは後ろを振り返った。


「いつもそうやって泣いているのかい?」
「ク、クレイン将軍…このような場所に…いけません。宴は、どうなされたのですか…」
「君を探すといって中座させて頂いたんだ。…どうしていけないんだい。」
「クレイン将軍のような、高貴な方が来られるような場所ではありませんから…それに…」
「それに?」

ティトは顔を背けた。礼儀正しい彼女が上官にこのような態度をとるのは初めてだった。クレインの表情は柔らかかったが、それだけに彼女はどうしてよいものか葛藤する。彼が一歩一歩あゆみよるのがわかったが、ティトはその場で氷ついたように動かなかった。

「ティト、それに、なに?」
「わたしはっ、クレイン将軍の信頼を裏切ってしまいました。あなたを守るのがわたしの、役目だったのに、あなたに守られてしまいました。自分が情けなくて、クレイン将軍に申し訳がなくて…」

ティトの肩にそっと手が添えられる。目の前にはクレインの瞳があった。長い金のまつげが頬に影をつくっている。ランプの炎が揺れていた。

「あの時のことかい。…もう傷はいいの?」
「…はい。」
「ちゃんと言うべきだった。君を不安にさせてしまったんだね。ごめん。ティトを信頼してないなんてありえないよ。ただ、君が傷付くところをもう見たくなかったんだ。」
「そんな!わたしは傭兵です!あなたを、守って死ぬのなら、それで…」
「ティト!」

体が温かいものに包まれた。抱き締められたのだと気付くまで少し時間がかかった。



あのときの匂いがする。ティトは射られたあと、ずっと感じていた感覚を思い出した。

「しょ、将軍…」
「あの時、空から墜ちてくる君をみた、あの時の気持ちがわかる?まるでこの世の終わりのようだった。…君を失ったかと思ったんだ。」


腕に力がこもる。線の細いこの体のどこにこんな力があるのだろう。ティトはどうすればよいのか分からず、彼の胸を押し返そうとしたが、びくともしなかった。


「クレイン将軍っ…苦しい…です。」
「クレイン、だよ。」
「ク…クレイン…さま…」
「僕のために死ぬなんて言わないでくれ。愛する人を失いたくないんだ。」


ティトは耳を疑った。将軍はなんと言ったのか。愛しているとはいわなかったか。


「ティト、好きだよ。これで2度目だね。…ティトが好きなんだ。」


この方は、自分にどうしろというのだ。ティトは拒絶も肯定も出来ずに立ち尽くした。傭兵の自分にどうしろというのか。この戦争がおわれば、二人の道が分かたれるのは目にみえていた。美しい思い出として胸に残すしかできない。


クレインは彼女の考えをわかったように、一瞬困ったように目を細めた。紫の瞳は温かい。鏡のようにティトの姿を映し、そっと閉じられた。

唇が重なる。こんなに心地良いものだったのかとティトは自然と彼に従った。


「悪いのは全部僕だ。ティトはなにも悪くないよ。困らせると、わかっているのにやめられないんだ。」
「クレイン…さ、ま…」


見透かされている。ティトがクレインに対して抱いていたある種の罪悪感を、彼はとっくに分かっていたのだ。ティトは枷が外れたように彼を求めた。腕をクレインの背に回し、離さないとばかりに抱き締める。


「好きです、クレインさま。ずっと…このようにできたらと…」


優しく高潔な匂いがする。あの時からずっと守られていたのだと気付いた。
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00 :08/ STORY
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